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相続税創設についてご紹介いたします。
相続税創設は明治38年
相続税は日露戦争の戦費調達を目的として、開戦の翌年1905年(明治38年)に創設されました。当時、非常特別税等という単一の税法により、地租、営業税、所得税、酒税、砂糖消費税、醤油税、登録税、取引所税、狩猟免許税、鉱区税及び各種輸入税の増税が図られていましたが、戦局が進むにつれてより多くの戦費が必要とされるようになり第二次非常特別税法により地租や所得税率の引き上げが行われたほか、新たに通行税、砂金採取地税、織物消費税が創設されました。
相続税もこの第二次増税時に創設された租税の一つですが、非常特別法ではなく単行法として規定されました。非常特別税法は戦争が終結したあと廃止されることが明文化され、戦時中の臨時的な増税という位置づけでしたが、相続税については存続しています。戦争終結後も明治政府の財政困窮が原因で相続税については「永久的性質の財源とする」1 とされたと言われています。当時のヨーロッパ各国では相続税が恒久的な税制として古くから採用されていたため、西洋を模範とした近代化政策を展開していた我が国としてもそれに準ずる形になったものと考えられています。
当時の税収は、明治38年は63万円、翌39年には140万円と戦費の0.1パーセント程度と決して高い税収ではありませんでしたが、昭和初期に3000万円前後となるほどに税収における地位を上げています。
シャウプ勧告による抜本的な見直し
昭和25年改正では、他の租税同様に相続税についてもシャウプ勧告により抜本的な見直しが行われました。シャウプ勧告では主要な事項として①相続税と贈与税を統合する「累積的取得税」の提案、②被相続人と親疎の別による差別税率の廃止、③「累積的取得税」の税率引き上げがあり、ほとんどそのまま実現されることとなり、税率はそれまでの最高税率が60-65%から90%へと大きく引き上げられました2。
しかし、相続税と贈与税を統合する累積的取得税については、取得した財産の価額を明瞭に記録しなければならず、実務上の問題が多いなどの理由から創設後わずか3年で廃止されています。
昭和26年9月8日、サンフランシスコ平和会議において、日本が連合国との間で調印した講和条約が翌7年4月28日に発効し、連合国による占領下から独立。昭和27年度税制改正では、免税点の引上げと税率が20-70%へと改正され、最高税率70%は平成15年改正まで続きました。
相続税と贈与税の一体課税措置 相続時精算課税の導入
平成15年には、シャウプ勧告以来の税制改革と言われた相続税と贈与税の一体化課税措置として相続時精算課税制度が導入されました。制度導入の趣旨・目的は、高齢化の進展に伴い相続による次世代への資産移転の時期が遅れていること、高齢者が保有する資産の有効活用を通じて経済社会の活性化にも資するという社会的要請、並びに相続関係に入る一定の親子間の資産移転について、生前贈与による資産移転の円滑化 に資するとされています。
最高税率については、個人所得課税の最高税率(50%)との較差が大きく、諸外国の例に比しても相当高いことに鑑み、50%へ引き下げられることとなりました。
参照1. 大村魏(1975)「相続税の誕生」『税務大学校論叢』、9号107-159頁
参照2. 菊地紀之(2005)「相続税100 年の軌跡」『税大ジャーナル』、1巻35-64頁
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